2025/04/24
事業者:千葉県県土整備部
インフラの更新加速/能登地震受け対策強化/角田秀樹 災害・建設業担当部長インタビュー
1日付の県定期人事異動で、県土整備部災害・建設業担当部長に就任した角田秀樹氏が、日刊建設タイムズの独占インタビューに応じた。建設産業の持続的な発展のため、一般競争入札の適用範囲拡大の試行も踏まえ、入札制度の適切な運用に注力する。建設分野のDXとして遠隔臨場の対象拡大などに取り組む一方、「地域の声に耳を傾けることで初めて見えてくる課題もある」との考えから、現場に足を運ぶことも必要とした。能登半島地震を受け、道路法面対策、無電柱化、インフラの更新・耐震化を加速する。
――千葉県の印象は。
角田 豊かな自然に恵まれ、農林水産物の宝庫である一方、優れた都市機能が集積し、多くの魅力を備えている。半島性が課題だが、成田国際空港のさらなる機能強化、首都圏中央連絡自動車道や北千葉道路など道路ネットワークの構築によって、県内の活力をより一層向上させる好機を迎えている。
――災害・建設業担当部長としての抱負と展望は。
角田 自然災害が激甚化・頻発化する中、平時からどれだけ準備ができているか、すなわち「事前防災対策」の取り組みが非常に重要。加えて、事故・災害発生時の初期対応の迅速化を図っていく。また、われわれの大切なパートナーであり、ともに地域の未来を支えていく建設産業が活力を持って発展していくことが非常に大事。インフラの整備・維持管理はもとより、自然災害への対応を持続的に担っていただける環境づくりに力を入れていきたい。具体的には、入札制度の整備と建設分野のDXを進める。災害協定については、建設業界団体などと意見交換を行い、より実効性のあるものにしていく必要がある。
――入札制度の整備について。
角田 県土整備部における不適正事案を受け、1月から一般競争入札の適用範囲を拡大する試行を行っている。建設業界団体や県の発注機関などと意見交換を行いながら、適切に運用できるよう注力する。改正品確法にあるように、地域や現場の実情に合わせた適切な条件、発注規模、仕様などによる工事発注が非常に大切。地域産業育成などの視点も十分に勘案しながら進めていきたい。
――DXに関する取り組みは。
角田 ICT施工、BIM/CIMの試行、遠隔臨場、ASPを拡大する。遠隔臨場については、従来の建設工事に加え、地質調査業務も2025年度から対象としている。一方で、社会資本の整備は机上で完結するものではない。現場に足を運び、施工者やコンサルタントと顔を突き合わせ、地域の声に耳を傾けることで初めて見えてくる課題もある。使い分けをしながら進めていくことが大事だと考えている。
――能登半島地震を受けて。
角田 千葉県は能登半島と同様の地理的特性を有し、大規模な震災が発生した場合、道路寸断による孤立集落の発生、アクセスの制限による救命・救助や復旧活動への影響も想定される。道路の防災機能の強化と、応急対応に当たる建設関係団体との協力体制の重要性を再認識した。
――具体的な対策は。
角田 能登半島地震を教訓として、千葉県建設業協会など関係機関の協力のもとに実施している県土整備部震災訓練の内容を見直すとともに、道路啓開計画を24年9月に策定・公表した。また、緊急輸送道路の寸断を防ぐため、道路法面対策や無電柱化を着実に進めるとともに、橋梁、河川・港湾の排水機場、海上からの物資輸送の拠点となる港湾施設の耐震強化岸壁の整備など、インフラの更新・耐震化を加速する。
――風水害に対しては。
角田 時間雨量50mm相当の降雨に対して洪水を安全に流せるよう河道改修や調節池等の整備を進めており、一定の治水効果が発現している。施設で防ぎきれない洪水に対しては、ダム等の事前放流や、河川監視カメラ・危機管理型水位計の増設、浸水想定区域図の公表など市町村と連携して住民などの避難行動につながるハザード情報の発信に努めていきたい。また、流域治水プロジェクトを推進するとともに、河川によっては、河川整備計画の規模を超える洪水の発生を踏まえ、整備目標の引き上げ等を検討する必要がある。
――地域の建設業への期待と思いは。
角田 地域の建設業の皆さまは、社会資本の整備と維持管理の担い手であるだけでなく、県民生活に直結するさまざまな危機管理に積極的に協力していただいており、欠くことができない。19年の房総半島台風・東日本台風による被災時、地域の建設業の皆さまには連日連夜、応急対応や災害復旧に尽力していただいた。鳥インフルエンザと豚熱の防疫活動の際にも、千葉県建設業協会や千葉県塗装工業会が活躍した。建設業の有する能力が多岐にわたって発揮されていることに感謝している。
――建設業の人手不足について。
角田 将来を担う世代に建設業の魅力を感じ、社会的役割に対する理解を深めてもらうとともに、入職したい・働き続けたいと思える環境づくりに取り組んでいきたい。マインクラフトコンテストやCCIちばと連携した小中学校への出張授業を継続するとともに、必要に応じて新たな取り組みを展開する。
――仕事に対する信条・姿勢は。
角田 仕事を進める上で、信頼関係の構築が非常に大事だと思っている。相対する人と誠心誠意向き合い、目の前の仕事を一つずつ着実に進めていきたい。
〈略歴〉
かくた・ひでき
1966年生まれ、匝瑳市(旧八日市場市)出身。法政大学工学部土木工学科卒業。91年4月、印旛土木事務所技師として採用。千葉土木事務所調整課長、県土整備部河川整備課副課長、成田土木事務所長、県土整備部河川環境課長、県土整備部技術管理課長、企業局水道部次長、県土整備部次長などを経て、1日から現職。趣味は、健康維持も兼ねた低山登山。