コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/11/26

終活

▼「終活」がブームのようにもてはやされるのも、時代というものだろう。人生の結末まで納得のいくものでありたいと願うことには、何の不思議もない。少し前までは死と直結するだけに不文律のきらいもあったが、この本格的な高齢化社会に至っては、そうしたものとも正面から向き合うべきときなのだろう。それが死や人生を見つめなおすことになるなら、少なからず意味がある
▼「終活」とは、自分の人生の終末のためにする活動で、就活や婚活などからの派生語という。人生の最期をより良いものに、つまり自分にとって理想的なものにするために事前に行う準備をいい、葬儀の内容やお墓のことをあらかじめ決めておくことはもとより、通常の遺言とは別に、自分の思いや意思を綴るノートを書いておいたりすることも含まれる。「終活」という言葉が定着するにつれ、医療や介護についての要望、身辺整理、相続の準備などにまで拡大し、関連書籍の出版や関連業界のフェアなども目立つようになってきた
▼「終活」ブームの背景には、配偶者や家族を持たない高齢者の増加をはじめ、独居老人や孤独死の増加といった社会問題も密接に関係している。東日本大震災を境に、年齢を問わず誰にでも訪れうる「不慮の死」が再認識され、ブームに拍車をかけた側面もあるだろう
▼そんな折、宮内庁からは、天皇、皇后両陛下の葬儀や墓にあたる陵について、国民生活への影響を極力減らすことが望ましいとする両陛下のお考えを基本に、陵の規模を小さくし、土葬を火葬に改めるという方針が示された。将来の天皇の葬送の基準となりうるもので、健在なうちにみずから問題提起をした両陛下の真摯な姿勢に共感した人も多いだろう
▼有識者からは、今回の方針を「残された国民を混乱させまいという配慮の表れで、終活の手本」との声もあがる。実際どのような形に落ち着くにせよ、伝統を重んじつつ「今という時代の要請」を意識した両陛下の姿勢は、われわれの「終活」にも通じるものがあるように思われる。

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