2013/10/07
軽減税率
▼予想通りというべきか、来年4月からの消費増税が決まった。安倍首相は消費増税とデフレ脱却の両立を掲げるが、多くの人が景気の先行きに確信を抱けない状況で、その道のりは険しいと言わざるを得ない。増税前には駆け込み需要もあろうが、その反動による増税後の景気の落ち込みは避けられまい
▼政府は消費増税による景気の腰折れを防ぐため、5兆円規模の歳出増などを柱とする経済対策を12月にまとめる。8%への引き上げをやむなしとするなら、次善の策としての経済対策は一定の評価ができる。ただ、対策の具体的な内容が固まらないうちから、規模の数字だけが早くも独り歩きし始めているのではないか。20年の東京五輪・パラリンピックに向けた交通・物流網の整備や学校の耐震化など項目の羅列だけでは説得力に乏しい
▼そもそも5兆円規模というのは、税率3%の引き上げ分(8.1兆円)のうち2%分を国民に還元するという官邸主導の論理によっている。設備投資減税や法人税減税など年1兆円規模の減税と合わせて、国民が納得する内容にしていく必要がある
▼こうした経済対策の一方で、生活必需品などの税率を低くする軽減税率の導入についても今後、与党が検討を本格化させる。いまのところ、15年10月に予定する10%への引き上げ時の導入を目指し、12月にまとめる与党税制改正大綱に結論を明記する見通しだ
▼軽減税率は、消費者が買い物をする際に負担の軽減を実感しやすく、低所得層を含む消費者全体が恩恵を受けられる利点がある。コメやみそといった食料品のほか、民主主義と活字文化を支える新聞・書籍などへの導入も検討の対象となる。欧州などでは「知識に課税せず」という共通認識があり、主要国の新聞に対する税率も、英国、ベルギー、デンマーク、ノルウェーがゼロ税率、フランスが2・1%、スペイン、イタリアが4%、ドイツが7%と多くの国で1桁に抑えられている。全国どこでも容易に購読できる環境を維持することを、真剣に考えるべき時が来ている。