コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/07/16

熱中症と都市気候

▼暑い、暑いとぼやいても、気温が下がるわけではないが、つい口走らずにはいられない猛暑である。35度半ばは当たり前、下手すれば40度に届こうかという場所もあり、このさき地球はどうなってしまうのかと危機感が募る
▼気象庁のまとめでは、最高気温が35度以上になる猛暑日の全国の年間日数が、過去40~50年間で3倍近くに増えた。近年は927観測点のうち、猛暑日になるのが100地点を超える日も珍しくなくなっているという。高温注意情報を発表し、注意を喚起しているが、敵は獰猛な牙をむく野獣に等しいと心したほうがいい
▼すでに熱中症で運ばれた人が昨年の同じ時期の2倍以上になっている。今年は梅雨明けが昨年より8~19日早く、梅雨明け直後は体が暑さに慣れておらず、体温を調節しにくいことも影響している。のどの渇きを感じにくく、体温調整がしにくい高齢者はとくに注意が必要だという。対策の基本は水分補給だが、自分で水が飲めるかどうかが病院へ行くかどうかの一つの目安でもあるそうだ
▼屋外だけでなく、室内も油断は禁物。湿度が高く風通しの悪い場所はとくに危険だという。夜は適度にエアコンをかけて休むように、と促す声も普通になったが、夜に限らず、エアコンの排熱が屋外の気温を上昇させ、エアコンの使用をさらに拡大するという悪循環を生み出している。こうした都市部での膨大なエネルギーの消費が、最近よく耳にする「都市気候」と呼ばれる現象を引き起こしている。一朝一夕には解決しない問題でも、安閑とはしていられない。今後は車の規制、空調の効率化、建物の断熱化、緑地の拡大、水路の復活などを精力的に進めていく必要がある
▼熱中症は誰にでも襲いかかる可能性があるが、とくに、炎天下の高温多湿現場での作業が避けられない建設業では、熱に慣れる順化期間の設定や水分・塩分の摂取など、目先の心がけ一つひとつが何より大切になる。施工前のリスクアセスメントや、周囲の気遣い・コミュニケーションも徹底していきたい。

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