コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/06/09

列島歓喜のW杯出場決定

▼劇的な同点シーン、感動の幕切れだったことは間違いない。4日の豪州戦でW杯ブラジル大会への出場を決めたサッカー日本代表。メディアに映し出される列島は歓喜の渦に包まれていたが、5大会連続ともなれば出場は当然くらいに思っていた筆者は、テレビの前で歓喜の輪に入りそこねた悔しさを少しばかり味わった。長丁場の予選を経ての本大会出場は、やはり並大抵のことではない
▼その采配に賛否はあろうが、イタリア人監督ザッケローニ氏の人となりには興味を引かれる。勤勉で誠実、柔和で紳士的な性格は日本人向きとも言われる。代表監督の経験がなく、イタリア国内では「過去の名将」とささやく声もあったが、誠実な人柄や実直なチーム作りのメソッドは、生き馬の目を抜くイタリアのサッカー界より、日本のサッカー界にマッチしていたと言えるだろう
▼ザッケローニ監督自身、「日本で誇りを取り戻した」と語っている。正当な評価を与えてこなかった自国へのリベンジめいた思いもあるはずだ。主将の長谷部誠選手も「日本人の考え方をよく勉強している。歴代監督の中でも、こんなに選手を思いやってくれる監督はいない」と話している
▼ザッケローニ監督は日本びいきなのだろう。実際、日本への愛情が感じられる言葉をいくつも残している。「私は半分日本人だと思っている」とも「日本に恋している」とも。震災後には家族を安心させるために一時帰国したものの、すぐに再来日し、「日本の力になりたい。それだけだ」と語った。4月の欧州視察の際に自宅に立ち寄ったときも「しばらく家には帰らない」と家族に告げ、家族も「今まではイベントが終わる度に帰るのが普通だったので驚かされた」と漏らしている。今回の豪州戦に並々ならぬ決意で臨んだことがうかがえる
▼代表監督にはキャリアや采配も重要だろう。しかし、文化も習慣も異なる他国の代表を率いる場合、何より必要なのはこうした愛情ではなかろうか。それが根底にあってこそ、采配にも磨きがかかろうというものだ。

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