コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2025/03/25

桜とさくらんぼ

▼この季節、多くの日本人が待ち焦がれるのが桜(ソメイヨシノ)の開花だろう。23日には2年連続で全国のトップを切って高知で開花が発表され、首都圏の開花も秒読み段階だ。今冬は気候が不安定だったにもかかわらず、時節をたがわず開花を迎える桜が、なおさらいとおしく思える
▼さくらつながりの連想というわけでもないが、ヨーロッパでは、さくらんぼが春の訪れを告げる果実として名高いようだ。イタリア文学者で翻訳者の須賀敦子の随筆『ミラノ 霧の風景』には、イタリア・ミラノの人たちが毎年、さくらんぼが八百屋の店頭に出るのを楽しみにしている、とある
▼「さくらんぼは四月ごろに、まず都心の高級ブティック街の、初物ばかりを扱う青物屋の店頭にならぶ。それを町っ子は、もうさくらんぼが出ていたと話題にして、心を躍らせて初夏の到来を待つ」のだそうだ
▼そもそも、桜とさくらんぼはどういう関係にあるのか、これまであまり考えてみたこともなかったが、調べてみると、さくらんぼは桜桃(おうとう)と呼ばれ、バラ科サクラ属サクラ亜属の果樹であるミザクラ(実桜)類の果実。一方の桜は、バラ科サクラ亜科サクラ属で、実は大きくならない
▼両者は一見関連しているようでも、定義は大きく異なり、同じバラ科でも、実際には違う植物ということになる。さくらんぼの主な品種はセイヨウミザクラで、桜の仲間ではあるものの、食用に適した品種となる
▼さくらんぼの歴史は古く、セイヨウミザクラはイラン北部からヨーロッパ西部にかけて自生し、有史以前から食べられていた。日本に伝えられたのは明治初期で、ドイツ人のガルトネルによって北海道に植えられたのが始まりとされる。その後、山形県をはじめとする東北地方に広がり、各地で品種改良が重ねられた
▼さくらんぼの旬は日本では6~7月ごろだから、ヨーロッパとは少々時期がずれる。桜は開花から満開まで1週間から10日ほどと短いが、桜が散ったあとに、さくらんぼの季節を心待ちにするのも悪くない。

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