コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2025/01/08

能登地震1年に思う

▼今年は元日から心底晴れやかな正月気分ではいられなかった。能登半島地震から1年。思うに任せぬ復旧・復興の中で、いまだ傷の癒えない方々のことを思うと、胸が痛む。明日は我が身かもしれないことを改めて肝に銘じる年としたい
▼とくに被害の大きかった輪島市など奥能登4市町では、この10年で2割減った人口が地震後さらに1割減ったという。若年世代の流出で50%を超えていた高齢化率は一段と高まる恐れがある
▼能登ではこの1年で、「定住人口」でも「交流人口」でもない、地域と多様に関わる「交流人口」が生み出された。ボランティアが延べ3400人を超え、継続的に能登と関わる「関係人口」として位置づけられたことは、希望の光と言えるだろう
▼能登に滞在するうち、能登のことを考えて移住し、関係人口から定住人口になった人も少なくないが、それでも被災によって縮む能登は、多くの自治体にとって近い将来と重なり、他人事では済まされない
▼国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2020年の全国の人口は1億2615万人だが、50年には1億469万人まで減少する。20年と比べた人口の割合では、30%未満の自治体数が10、30~50%が331、50~70%が705、70~100%が605、100%以上が77。50年の人口が20年比で半数未満になる自治体は2割に上る計算になる
▼さらに高齢化率では、20%未満の自治体が2、20~30%が49、30~40%が455、40~50%が665、50%以上が557となり、50%以上の市区町村が3割に達する見込みだ
▼高度経済成長期以降、東京への人口一極集中が続く一方で、国全体では人口減少と少子高齢化が進み、地方では公共交通や医療など生活サービスの基盤が崩壊の危機に直面している。今後は自治体間で人口を奪い合う移住ではなく、関係人口の拡大を重点施策に据える必要がある。都市と地域を行き来する人を増やすことで持続可能な社会を目指すことが、能登に限らず国全体に求められている。

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