コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2024/12/17

残り時間減る「世紀末時計」

▼被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」のノーベル平和賞受賞は、現下の世界情勢だからこそ一層意義深いものとなった。授賞式での記念講演で被団協代表委員の田中煕巳さん(92)が「核兵器は一発たりとも持ってはいけない」と訴えるその姿には、胸を打たれた
▼その一方で、世界情勢は混迷し、不透明さを増すばかりだ。ウクライナ情勢しかり、中東情勢しかり、韓国情勢しかり。平然と「核の脅し」を口にする為政者もいれば、核軍拡を不透明な形で続ける国もある。21世紀の世界情勢がこうも危ういものになろうとは、いったい誰が予想しただろう
▼核による破滅までの切迫度を午前0時までの残り時間で示す「世界終末時計」というものがある。米科学誌「原子力科学者会報」が1947年から毎年発表しているもので、2023年の時計の針を目にして愕然とした。破滅を示す午前0時まで残りわずか90秒だった
▼ロシアによるウクライナ侵攻やロシアの新戦略兵器削減条約(新START)履行停止宣言などが影響し、ここ数年で急速に針が進んでいる▼ソ連が原爆実験を行った1949年で3分前、米国が前年に水爆実験を行った53年には2分前にまで迫ったが、100秒を切ったことは49年以降1度もない。現状がいかに危機的かを物語る
▼これまでも69年が10分前、74年が9分前、84年が3分前、88年が6分前、91年が17分前、98年が9分前、2007年が5分前、15年が3分前、20年が100秒前と、残り時間は数分数秒単位で増減を繰り返してきた。第二次世界大戦以降も核の脅威から解放される状況がほとんどなかったことを示してもいる
▼田中さんの授賞式での講演の中に「核兵器の非人道性を感性で受け止める」という言葉があった。一人でも多くの人が「感性」で受け止めることこそ、真に重要なことではないだろうか。「人類が核で自滅することのないように」原爆体験者の証言を聞くことが、核兵器廃絶への最大の近道なのだと改めて思わされた。

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