コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/12/06

本州唯一の「クマなし県」

▼異常事態と言える今年のクマによる被害については先月初めの小欄でも触れたが、被害の広がりはいまだ落ち着く気配がない。出没の頻度や範囲が拡大の一途をたどるなか、本州で唯一クマが生息していない「クマなし県」が千葉県だと知った
▼かつては千葉、茨城の両県にクマはいないとされていたが、10年ほど前の調査で茨城の出没例が確認され、事実上の「クマなし県」は本県のみ。東京都や大阪府でも出没例があるのに、なぜ千葉にはいないのか。少々意外な気がするが、千葉県民にとっては安心材料ではある
▼国内にいるクマは周知の通り、北海道がヒグマ、本州以南にはツキノワグマ。ツキノワグマは本州の広範囲で生息が確認されているが、関東では北部と西部に限定される。九州にも以前は生息していたが、現在は絶滅したとされる
▼過去にも千葉にクマはいなかったようだ。関東北部では後期更新世(約12万~1万年前)のクマの化石が出土しているが、本県内からは見つかっていない。クマがいない理由は地理的な問題で、房総半島の山は他地域の山塊から孤立しており、クマが森林を伝って来られなかったのではないかと考えられている
▼将来的にクマが千葉に来る可能性について専門家は「ゼロではないが非常に低い。川を泳ぐことはできるが、生息地から千葉までは距離があり、現実的でない」とする
▼千葉県民はとりあえず安心してよさそうだが、もちろんクマ以外の危険な害獣は本県にも生息する。10月25日にはJR千葉駅付近の千葉市中心部でイノシシが目撃され、捕獲までの数時間、大捕り物が行われ、負傷者も出た
▼シカやキョンなども生息数が増えており、わなを設置するなどしても追いつかないのが現状。とくにキョンは俊敏で、わなに掛かっても逃げられることが多いという。街なかで見かける数も増えており、ここ10年で実に3倍の7万頭に達している。自然環境の急激な変化の中で、こうした野生動物にどう対処していくか、難しい課題を突き付けられている。

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