2022/11/18
深刻化する海岸浸食
▼都心から程近い遠浅の海といえば、本県の九十九里浜を思い起こす人は多いだろう。筆者も子どものころ海水浴に訪れて、広い砂浜で普段味わえない開放感を味わったことを思い出す。しかし近年は、海岸浸食によって状況が変わってきている
▼国や県の調べによると、九十九里浜の最大浸食幅は1965~2015年の半世紀の間で実に90mに及ぶ。この先浸食対策を続けたとしても、どこまで食い止められるかは未知数だ
▼海岸浸食は世界中で深刻化している。国内でも多くの海岸が浸食を受けており、一定期間での最大浸食幅をみると、胆振海岸(北海道)が100m(65~22年)、仙台湾南部海岸(宮城県)が100m(63~22年)、遠州灘沿岸天竜川以西(静岡県)が160m(62~21年)、皆生海岸(鳥取県)が100m(47~03年)、宮崎海岸(宮崎県)が94m(62~12年)となっている
▼首都圏では鎌倉の景勝地、七里ガ浜も浸食による深刻な影響を受け、浜の所々で砂が消え、むき出しになった岩々が波を洗う状況になっている。46~19年の間に最大50mが浸食され、人気だった海水浴場も02年を最後に閉鎖されている
▼海岸浸食の原因には、言うまでもなく地球温暖化が挙げられる。気候変動によって海面が上昇し、暴風雨による高潮の頻度や強度も高まっている。また、海岸の砂浜は波風によって浸食される一方、川から海へ運ばれる土砂を上流のダムなどが妨げている場合もある
▼国交省が所管する砂浜海岸約3250㎞のうち、浸食対策を行っているのは1割程度にとどまる。全体的な被害状況は把握できていないのが現状で、河川対策に比べて予算が潤沢でない事情もある
▼護岸など浸食対策への投資は待ったなしで、いま損害を抑えることができれば、将来の出費を減らすことにもつながる。現実問題としてすべての砂浜を維持するのは難しいとしても、優先順位をつけながら、被害が大きくなる箇所や利用面で重視される場所から重点的に対策していくことが求められる。