コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/11/30

加曾利貝塚2期調査の結果

▼国特別史跡の「加曽利貝塚」(千葉市若葉区)では現在、第2期発掘調査(2020~22年度)が進められているが、今月末で終了する21年度調査でも大きな成果があった。これまでに発掘された区域が史跡面積15haのうち1割にも満たないことを考えれば、いまだ歴史的な重要史料が眠る宝庫と言える
▼今年度の調査は、南貝塚中央部のくぼ地付近の1669㎡で実施。南貝塚は馬蹄形で、中央部がすり鉢状のくぼ地になっているのが特徴だが、今年度の調査ではこのくぼ地を中心地点に向かって手作業で発掘したところ、1万年以上前の火山灰でできた地層(関東ローム層)の真上から、約3000年前の縄文時代晩期の土器などが出土したという
▼関東ローム層の上に堆積しているはずの7000年分の地層がすっぽり消えていることになり、今回の調査で縄文人が地面を削り取った可能性が高まった。生活の場を作るために掘削し、平地に整備したと考えられる。周囲からは石剣が多数出土したことから、祭祀の場だった可能性も指摘されている
▼さらに、くぼ地を囲む貝塚の発掘では、貝層の上に平らに整地された焼土が2層にわたって見つかり、使用されなくなった住居が貝塚に転用され、その後、縄文人が土で整地して、火を使った跡と考えられるという。2層にわたって同じことが繰り返されたとみられるが、付近からは土器片などは見つからなかった
▼整地の規模などは今後の調査に委ねられるが、長年の謎だったくぼ地の形成過程や用途が徐々に明らかになってきた。来年度にかけて地上の火山灰などを解析し、縄文人がどれほどの量の土を掘削したかなど、くぼ地の整地の実態などを調査していく
▼市が2017年に半世紀ぶりとなる同貝塚の本格調査に着手し、昨年度からは第2期調査が始まった。当初、貝塚は単なるゴミ捨て場と考えられていたが、第2期調査によって、生活の場としても使われていた可能性が一層高まった。発掘調査によるさらなる成果を楽しみに待ちたい。

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