コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/11/09

道半ばの廃炉作業

▼弊社が加盟する公益社団法人日本専門新聞協会は、役員研修の一環として4日に福島第一原子力発電所を視察した。廃炉に向けた多くの課題を抱えながらも、構内では懸命な汚染水・処理水対策が進められていることを肌で感じた
▼一行は東電の係員から説明を受けながら、構内の各種設備などを視察。原子炉建屋の外観俯瞰エリアに近づくと、線量計の値(mSv/時)はみるみる上昇したが、もちろん、建屋を展望できるデッキでもマスクやヘルメットなど特別な装備の必要なしに視察が可能な空間線量率だ
▼構内では現在も1日あたり平均4000人弱の協力企業作業員と東電HD社員が作業にあたっている。被ばく線量は平均2・54mSv/年で、法令上の線量限度を大きく下回る▼実際に構内を巡ると、350万㎡に及ぶ敷地の広さに驚かされ、配備された各種設備の規模や種類にも目を奪われる
▼ただ、国内外の英知を結集して進められている廃炉への道のりは決して平たんではない。使用済み燃料プールからの燃料取り出し作業は、3、4号機で完了したものの、1号機の取り出しは2027~28年度、2号棟は24~26年度の開始となる
▼核燃料と構造物等が溶けて固まった燃料デブリの取り出しでは、2号機から試験的に取り出す方向で装置(ロボットアーム等)の準備が進められている。1~3号機では、燃料デブリを安定させるために水を循環させて冷やし続けており、燃料デブリに触れた水と建屋に流れ込んだ地下水が混ざることで汚染水が発生。汚染水を各種設備でトリチウムを除く大部分の放射性物質の濃度を低減させ、ALPS処理水等としてタンクで保管している
▼政府は4月、この処理水を海洋放出する方針を決定したが、今回の視察でも処理水について、滅菌すれば十分飲めるレベルとの説明があった。とはいえ、風評被害防止のためにも、地元をはじめ国内外に向けて粘り強い説明や努力が不可欠だ。廃炉までには30~40年。残された課題が山積することも痛感させられた。

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