コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/08/07

ロンドン五輪で思う理想と現実

▼暑い夏を興奮と感動でさらに暑くするロンドン五輪も、はや後半戦。出場だけでも並大抵のことでないと知りつつも、やはり日本勢がメダルを取るのはうれしい。「金」の数こそ少ないが、ずいぶんメダルを積み上げてくれた
▼メダル至上主義も考え物だが、選手はもちろん高みをめざし、見る側もいい色のメダルを期待する。競泳の平井ヘッドコーチは「たとえ銀を10個取っても金1個にはかなわない」と話したが、頂点だけを目指してきた者にしてみれば、そんな思いも当然だろう
▼柔道女子57キロ級で金メダルに輝いた松本薫選手は、試合後のインタビューで「1番は好きです」と語ったが、それを成し遂げられる選手はごく一部だ。一つひとつの言葉からは、そこへたどり着くまでの計り知れない努力の嵩が透けて見える
▼見る側も勝手なもので、種目や選手によってメダルに対する見方が変わる。さしずめ柔道などは、成績が振るわないと落胆が大きい。選手自身も「金」以外では不本意といった表情が目立つ▼その柔道も、終わってみれば男子は五輪史上初めての「金」ゼロとなった。しかし山下泰裕氏によれば、実力通りの結果だという。聞けば世界ランク1位は1人もいなかったというから、納得もいく
▼「お家芸」といわれた柔道も、いまや日本が競技発祥国という程度でしかなくなった。美しく、胸のすくような柔道は理想だが、それを追い求めてもますます後れを取るだけだろう。その意味では、美しい体操を求め続けた内村航平選手の活躍が、ひときわ価値あるものにも思われた。

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