2020/12/15
コロナに明けコロナに暮れる
▼今年も余すところ半月ほど。コロナ禍に悩まされ続けたこの2020年を、良き年と振り返る人はまずいないだろう。新型コロナウイルスによってさまざまな不自由を強いられ、息苦しさを感じさせられた年として、私たちの記憶にも歴史にも長く刻まれていくに違いない
▼今年を漢字1字で振り返る読者アンケートが先日、某新聞に掲載されていたが、そこでも上位には新型コロナの影響が強く反映されていた。1位が「禍」、2位が「忍」、3位が「耐」、以下4位「密」、5位「粛」、6位「病」、7位「変」、8位「疫」「籠」、10位「家」と、コロナ絡みのものばかり。いかに多くの人がコロナに翻弄された1年だったかを示している
▼恒例の流行語大賞でも、年間大賞は「3密」だった。ほかにもトップテンには「アベノマスク」「アマビエ」「オンライン○○」「GoToキャンペーン」といったコロナ関連の言葉が入賞した
▼「愛の不時着」「あつ森」「鬼滅の刃」など、それ以外の授賞語にひどくほっとさせられるのも、今年ならではの感覚かもしれない
▼「3密」は言うまでもなく、厚労省が呼びかけた新型コロナの感染防止を目的とする新概念・新習慣のことだ。当初はあまり広がりを見せなかったものの、東京都の小池百合子知事が殺到する報道陣に「密です」を連呼したことが報じられ、ネットなどで一気に拡散した
▼選考委員の一人である言語学者の金田一秀穂氏は〝3密〟を「健気な日本語」と評した。「〝3高〟や〝3K〟など、いつくかの重要項目をまとめる表現が日本語にはあり、得意技」なのだという
▼さらにその受賞理由として「この悲劇的な厄災の中にあっても、日本語はその特性を発揮して注意すべき心得をまとめて表し、予防を喚起した」と述べている
▼となれば「3密」も、日本人特有の潔癖さや生真面目さが生んだ言葉と言えるかもしれない。年が終わってもコロナは終わりそうもない今、私たちはさらに「3密」回避を徹底し、生活に浸透させていかなければならない。