2020/09/12
日蓮生誕地探し再調査
▼日蓮宗を開いた鎌倉時代の僧・日蓮(1222~82)の生誕地跡を探すプロジェクトについては以前、小欄でも紹介したが、この跡地調査が鴨川市により再開された。昨年5月の調査では大弁天島、小弁天島周辺を調べたが、人工物は発見できず、今回はさらに海岸寄りの内浦湾内を調査する。今度こそ新たな発見により歴史ロマンを科学的に解明してほしい
▼予定では昨年5月以降も潜水調査を行う計画だったが、秋に相次いだ台風と今年の新型コロナウイルスの影響を受け延期されていた。日蓮生誕800年にあたっての記念プロジェクトでもあり、満を持しての再調査と言っていいだろう
▼今回の調査では、自律型海上無人ロボット(ASV)を遠隔操作して海底の人工物などを探査する。市から委託された東京海洋大学大学院の岩淵聡文教授(水中考古学)が調査を担当。ASVにはサイドスキャンソナー(超音波の水中音響機器)と光学式カメラが搭載されており、海底の形や画像を撮影する。建築物の痕跡や人工的な地形などが見つかれば、さらに詳細な調査を行うという
▼昨年調査した大弁天島、小弁天島には「真水が湧く井戸がある」との伝承があり、その場所を特定しようとしたが、人工物等は発見できなかった。岩淵教授は、中世の漁村が波の荒い外洋近くの岸辺にあったとは考えにくく、生誕地は別の場所である可能性が高いと判断した
▼日蓮の生誕地として「片海」という地名が古文書に複数見られるが、現在の地名にはないことに着目し、日蓮が生まれた集落が地震による津波で沈降したとしても、比較的浅い海底ではないかと推察。過去に調査されたことがない内浦湾を調査地点に選んだ
▼12日付の報道によれば、台風10号の影響や機器不調によりASVによる海底調査が実質2日間しかできず、データ収集が終わらなかったため、11月に再度、現地調査を行うことになったようだ。今後の調査結果がまとまるのを首を長くして待ちながら、吉報がもたらされることを望みたい。