コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/07/21

悩み多きブラジル

▼世界にはこの期に及んでも新型コロナウイルスを軽視する為政者がいるようだ。その最たるものがブラジルのボルソナーロ大統領だろう。自身が新型コロナに感染しても「雨みたいなもので、みんながかかる」などと語る。為政者がこれでは国内で感染者が急増するのも無理はない
▼ブラジルでは新型コロナによる死者が7月初めに6万5000人を超えた。感染が拡大の一途をたどり、医療態勢や経済への影響も心配されている。大統領への批判も高まり、支持率も急降下している
▼こうした現状とともに驚いたことには、新型コロナによるこの死者数は、ブラジル国内で2017年に起きた殺人事件の被害者数とほぼ同じだという。17年は国内の治安が悪化して被害者が過去最悪の6万5602人となり、18年の大統領選ではボルソナーロ氏が治安回復を公約として当選した
▼そんな経緯からすれば、ボルソナーロ氏が新型コロナについて「ちょっとした風邪だ」などと発言して、集会にマスクなしで参加するなど、感染予防策を否定するような行動を続けてきたのは、いかにも罪深い。実際、国内では「ボルソナーロは殺人者だ」といった落書きも目につくという
▼ブラジルの治安の悪さは昨今に始まったことではない。時代は半世紀ほどさかのぼるが、ブラジルの作家フーベン・フォンセッカの短編集『あけましておめでとう』(水声社)でも、その表題作にはリオデジャネイロの大都会を舞台とする残忍な強盗殺人が描かれる
▼数人の若者が年末の夜に軽いノリで富裕層宅に押し入り、殺人を犯し、金目の物を奪って家に帰り、次の年は良い年になるといいねという意味の「あけましておめでとう」。暴力には罰が下されることもなく、あっけらかんと人が殺される
▼こうした治安の悪さと今回の新型コロナの感染拡大をことさら結びつけるつもりはないが、海外では感染者に貧困層が目立つという話はよく耳にする。格差がコロナ感染を助長しているとすれば、その現実はあまりにも悲しい。

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