コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/05/19

宣言解除も楽観は禁物

▼新型コロナウイルスの緊急事態宣言が39県で解除され、長いトンネルの先にようやく光が見えた気もするが、緩みはまだまだ禁物だ。感染拡大に一定の歯止めがかかったように見えるものの、外出自粛などで相当傷んだ経済を考慮した政治判断の側面もある
▼解除のタイミングは難しく、過去にも早すぎた解除が裏目に出た例は少なくない。百年前のスペイン風邪(インフルエンザ)では、米国で集会制限解除を急いだあまり、たちまち感染第二波が生じ、死者を増やし、経済の疲弊も長引く結果になった
▼日本史家の磯田道史氏によれば、歴史的に見ても、総じて政治指導者は初期の段階では楽観的になりがちだと警鐘を鳴らす。政治家や官僚には処置の失敗を認めたくない心理が働き、状況がひどくなるまで抜本的な対策をためらう傾向があるという
▼日本でも今回の新型コロナ対応ですでにこうした傾向が諸所に見られはしまいか。今後、感染第二波、第三波の発生も十分考えられ、段階的な宣言解除が裏目に出ないことを祈るのみだ
▼先のスペイン風邪では1918年~20年に世界中で、当時の世界人口の4分の1程度に相当する5億人が感染。死者数は1700~5000万人との推計が多く、1億人に達したという説もあるなど、史上最悪の感染症の一つとされる
▼日本では18年10月~19年3月に第1波、19年12月~20年3月に第2波、20年12月~21年3月に第3波に見舞われた。当時の人口5500万人に対し約2380万人が感染したとされる
▼最大の流行は第1波で、患者数・死亡者数とも最も多く、第2波は患者数が減少する一方、致死率は上昇。第3波は患者数・死亡者数とも比較的少数だった。致死率は全体で1・63%だった
▼スペイン風邪は世界規模で猛威を振るったことにより、生き残った人たちは抗体を獲得。それが最終的に減少に繋がり自然消滅的に終息した。今回の新型コロナでもこうした多くの犠牲を払ったうえでの終息となるなら、まさに敗北としか言いようがない。

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