コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/04/21

計り知れない隔離の閉塞感

▼大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内で新型コロナウイルスの集団感染が報道された2月の時点では、その経過をまだどこか傍観者のように眺めていたことを、いまでは深い反省とともに思い出す
▼横浜港に2週間以上停泊して乗船者を隔離し、その後、段階的な下船が始められたが、乗船者の方々の不安はいかばかりだったろう。そして、いまや全国の病院や宿泊施設、さらには自宅でも隔離状態に置かれた多くの感染者がいる。その不安な胸中に思いを馳せずにはいられない
▼コロンビアのノーベル賞作家、ガルシア・マルケスに『コロナの時代の愛』という長編小説がある。19世紀から20世紀初頭にわたる内戦とコレラの蔓延する時代を描いた壮大な恋愛小説だが、この小説の中でも、コレラ患者を乗せた船が登場する
▼主人公が失恋の失意の果てに、ジャングルの迫る濁った川を船でさかのぼる途中、疾病を意味する黄色い旗を掲げた船とすれ違う。コレラ患者を乗せたこの船のせいでこれから航行する上流部で大きな被害が出ているとの情報が入り、荷を積み込むために立ち入る人のいない場所でも下船が禁止される
▼目的地に着くまでにそれから6日かかり、その間、乗客は監獄にいるような生活を強いられ、退屈をしのぐ様々なものが配られたが、結局は「そんな気晴らしもしょせんは倦怠感を助長したに過ぎなかった」と記される
▼まして今回の新型コロナで「ダイヤモンド・プリンセス」での隔離を強いられた方々は、自らの感染の恐れとともに、計り知れない不自由で不安な日々を過ごしたことだろう。下船までの対応には批判も出たが、船という閉鎖空間にある乗客の扱いに難しさがあったことは否定できない
▼いまや国内で感染者が日増しに拡大し、このままでは感染列島と化してしまう恐れすら現実味を帯びる。島国ゆえにもう少し早急な手立てはなかったかとも考えるが、このグローバル社会ではそれも不可能だったろう。この先も難しい選択を迫られる日々が続く。

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