コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/02/18

本場で三つ星の快挙

▼「ミシュランガイド」の本場フランス版で、日本人シェフが初めて「三ツ星」の栄誉に輝いたニュースが先日のメディアを巡った。三つ星を獲得したのは、小林圭さん(42)がパリで経営するフレンチレストラン「KEI」。日本人シェフもついにここまで来たかと感慨深い
▼日本国内版「ミシュランガイド」ではすでに三つ星の日本人フレンチシェフが存在するが、何といってもフランス本国での獲得。「フランス人のすし職人が三つ星をとるようなもの」と誰かが言っていたが、そう考えれば、今回の受賞がいかにすごいことかがわかる
▼器用な日本人のこと、幾多のフレンチシェフが国内外で腕を振るう時代だが、やはり本国でとなれば話が違う。フランス人といえばプライドが高く、何かと自分たちが世界一と考えるお国柄。小林さんのたぐいまれな力量がうかがい知れる
▼2011年に自分の店を開き、12年に一つ星、17年に二つ星を獲得。順風満帆に見えるが、高校を中退し、地元長野県のフレンチレストランに修行を願い出たときには「休みはないし、給料も低い。よく考えて電話しろ」と言われたそうだ。店では鍋洗いから始め、まかない料理を任されたものの、「ここで一生分怒られた」と語る
▼21歳で渡仏し、03年にフレンチの巨匠アラン・デュカス氏の三つ星レストランに移ると、30人の料理人はすべてフランス人。誰もが上の地位を求める中で「調理の工程を見通す視野の広さ」と「絶対にミスしない正確さ」を身につけた
▼パリのルーブル美術館近くに11年、テーブル10卓ほどの店「KEI」を開き、今では世界から1日千件もの問い合わせが届くという。ミシュランでも「味覚が卓越し、繊細な手法と質の高い食材を生かす和食の影響を随所に見せている」と高く評価された
▼ミシュランの星は、維持するほうがさらに難しいとよく言われる。それでも「三つ星はあくまでミシュランのもの。それがすべてではない」と気負いはない。小林さんの快進撃はまだまだ続きそうだ。

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