コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2019/10/28

急がれる無電柱化

▼相次ぐ台風被害で大きな問題となった電柱の倒壊。本県でも台風15号で多くの電柱が倒れ、大規模な停電につながった。その背景には〝電柱大国〟と言われる日本の現状がある
▼国内の電柱は2017年度末で3585万本に及び、現在も年7万本のペースで増えている。「無電柱化」が重要課題に挙がって久しいが、その必要性が改めて浮き彫りになった
▼日本における無電柱化は海外の主要都市と比べ大きく遅れている。海外の主要都市の無電柱化率をみると、ロンドン、パリ、シンガポール、香港で100%、ハンブルグ州(ドイツ)で95%、ニューヨークでも83%に達している。これに対し日本国内の無電柱化率は17年4月現在で東京23区7.8%、大阪市5.6%、名古屋市5.0%にとどまり、日本全体ではわずか1.2%でしかない
▼これまでの災害で倒れた電柱は、阪神淡路大震災で電力・通信あわせ約8100本、東日本大震災で同じく約5万6000本、昨年の台風21号では約1700本(停電最大約260万戸)に及んだ。今回の台風15号では1000本超が倒れ、停電は最大約93万4900戸に上った
▼そもそも電柱や架線は、街並みや観光地などの景観を損ねる場合が多い。災害時には、倒れて道路をふさぎ、救急車などの緊急車両が通行できなくなる恐れがある。平時でも幅の狭い道では通行の妨げになり、歩行者や自転車が自動車と接触する危険が増す
▼無電柱化が進まない第一の要因はコストだ。無電柱化には1㎞で費用5.3億円(土木費3.5億円、設備費1.8億円)を要する。このほか、地下化により地震などの際に電線の断線などの異常が発見しづらく、復旧に時間がかかる側面もある
▼それでも、倒れた電柱による停電などの被害を考えれば、無電柱化は不可欠だ。国や業界でも、電線を埋める深さを浅くしたり、人件費の抑制や工期の短縮につながるコスト対策を進めている。一刻も早い無電柱化の実現により、災害に強く景観の良い街づくりを目指したい。

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