コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2019/10/16

息づく「ノーサイド」

▼これほどひたむきで、迫力あふれるスポーツもまれだろう。開催中のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会は、日本代表の快進撃もあって、日々の熱戦が感動的な時間を生んでいる。おりしも台風による深刻な被害が続いているだけに、日本代表の活躍が被災者の方々にも少なからず元気を与えているに違いない
▼思い返せば、強豪・南アフリカから大金星を挙げた2015年の前回大会でも、日本代表の奮闘に手に汗握った。その興奮も忘れかけていたが、1次リーグ4戦全勝で8強入りした今大会では前回をしのぐ高揚感に浸っている
▼そして今大会では、何よりラグビーというスポーツそのものの素晴らしさに気づかされた。試合が終われば、敗者が勝者をたたえ、ジャージーを交換したりする「ノーサイド」の精神。敗者が花道を作って勝者をたたえると、同じように勝者も敗者をねぎらう
▼日本ではラグビーの試合終了を「ノーサイド」と言う。戦いが終われば、敵味方の側(サイド)がなくなるという意味だ。海外では「死語」となり、使われなくなったそうだが、その精神は今も世界共通だ
▼今大会に出場している海外のチームが、試合後に日本流のお辞儀をする様子も話題になっている。日本の文化を尊重し、日本のファンの応援に感謝する気持ちを表しているという
▼イタリアの主将は「多くの観客が雨の中で最後まで試合を見てくれたことへの感謝の気持ちだった」と、大阪・花園ラグビー場でのナミビア戦後に語った。ウルグアイの主将は岩手・釜石の復興スタジアムでの初戦で、試合前の国歌斉唱の際に一緒に入場した子どもがスペイン語で歌ってくれたことについて「自分の国にいるようで、すごくうれしかった」と笑顔を見せた
▼試合の一瞬を切り取った報道写真を見ても、そこには鍛え抜かれた肉体がぶつかり合う迫力とともに、一幅の絵のような美しさがある。互いを認め合うラグビー精神は今も脈々と息づいている。「尊重」のスポーツと言われるゆえんでもあろう。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ