コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2019/02/05

謙虚さ際立つ「銀幕のスター」

▼「銀幕のスター」という言葉も、多くの俳優を等身大で身近に感じる現代では死語のように思えるが、過去を振り返れば、スクリーンを彩るいくつもの顔が思い浮かぶ。清楚にして可憐で気品のあるスターとして多くの人に愛されたオードリー・ヘプバーン(1929~93)も間違いなくその一人だろう
▼ファッションアイコンとしてのオードリーに焦点を当てた写真展を最近観る機会があったが、そこには意外なほど謙虚で努力家の一面が写し出されていた。数々の写真作品に付された説明からは、自信よりもはるかに大きな不安や葛藤を抱え、後世まで語り継がれる大スターとは思えぬ言葉も少なからず紹介されている
▼たとえば「スクリーンに映る自分の顔を想像してみたら、私を映画で観たい人なんているのだろうかと不安になりました。ルックスに自信があったわけではないですから」
▼彼女に失いがちな自信を与えたという衣装の役割については「私には役柄をそのまま演じるテクニックがなかったので、その役らしく見えるだけで安心できたのです」とまで語っている
▼『パリの恋人』ではダンスシーンのために毎日10時間以上も稽古に励むなど、努力家の面も際立つ。本人いわく「天賦の才に恵まれていると思ったことはない。仕事を心から愛して最善を尽くしただけ」とも
▼撮影の際には常に不安と隣り合わせで、「セリフをとちらずに言えるかしら。ちゃんと演技できるかしら」と心細さを抱いていた。撮影現場では共演者やスタッフにも思いやりと真心をもって接するなど、容姿だけではなく内面の美しさも兼ね備えていた
▼出演作が増えるごとに、彼女が類まれな才能を発揮していったのはよく知られるところだ。晩年には社会貢献活動に没頭し、虚栄に溺れぬ生き方を貫いた。そんな彼女だからこそ、永遠に古びず、時代を超えて輝き続けるアイコンとなりえたのだろう。その素顔を知れば知るほど、銀幕での華麗な姿に、私たちはますます魅力を感じ、勇気づけられもする。

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