コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2018/07/31

ピカソとガレ、神秘の奥深さ

▼ポーラ美術館(神奈川県箱根町)が所蔵するピカソ作「海辺の母子像」の下層部に新聞が張り付けられていることが先端技術を使った調査でわかり、話題を呼んだ。絵中央の下層部に1902年1月18日の仏紙「ル・ジュルナル」が確認されたという
▼以前の調査で作品の下層に母子像とは別の人物とみられる絵が描かれていることはわかっていたが、今回の調査ではその鮮明な画像も得られた。貧しかった若いピカソが作品の上に別の作品を上書きしたことはすでに知られているが、ピカソ研究にとって今回の発見は重要な発見となる
▼ポーラ美術館に話を移せば、筆者は先のGW期間中に同美術館を見学した。あいにく「海辺の母子像」にはお目にかかれなかったが、アール・ヌーヴォーを代表するフランスのガラス工芸家エミール・ガレの企画展を堪能できた
▼ガレの創造の源泉でもある「森」と「海」という二つの視点から紹介。ガレは自宅の庭園に約2500種の植物を収集し、工芸家としての卓越した技術はもちろん、その作品群のモチーフとなった植物や生物などの博物学にも造詣が深かった
▼当時フランスで普及していたジャポニスム(日本趣味)に影響された作品もあり、日本の美術から引き写された動植物もみられる。植物ではキクへの関心がとくに強かったようで、農商務省の技師としてナンシー森林学校に留学していた高島北海に、ガレは「キクの国についてお伺いしたいことがたくさんあります」と伝えている
▼ガレと日本の植物の関係を語るには、シーボルトの存在も欠かせない。シーボルトは日本の園芸に高い関心を持ち、様々な植物の苗木や種子、球根などをオランダに持ち帰った。これらの植物はフランスの植物学や園芸に大きな影響を与え、ガレもシーボルトの植物園から購入している
▼ガレの日本への関心には並々ならぬものがあり、それが作品に見事に反映されている。今回のピカソ絵画の新発見とも相まって、芸術の神秘的ともいえる奥深さを感じずにはいられない。

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