2012/12/10
笹子トンネル事故に見る「保全予防」の必要性
▼「備えあれば憂いなし」というが、「備え」に怠りがあったと言わざるを得ない。中央自動車道の笹子トンネルで起きた崩落事故は、実態が明らかになるにつれ背筋が寒くなるものだ。経年劣化への警戒の甘さを浮き彫りにするとともに、今あるものを繕う「保全予防」の必要性を改めて突きつけた
▼トンネルの開通は35年前で、今回の事故では天井板を吊る金具のボルトが抜け落ちて天井が崩れ、車が次々と下敷きなった。崩落の要因が老朽化にあるのは間違いないが、だとすれば、同様の事故が起こる可能性も否定できない。トンネルにとどまらず、インフラ全般の早急な安全点検が急務といえる
▼事故現場では吊り金具の付け根の部分は目視による点検だけで、ハンマーを使った打音検査は行われていなかった。目視ではわかりにくい内部を調べるには放射線や超音波を使ったものもあり、実際、これに比べれば打音検査は精度が落ちるという。今回の事故を契機に、より正確な測定ができる体制を整えることが求められる
▼一般にコンクリートの耐用年数は約50年といわれ、2029年には全国のトンネルや橋の半分近くがその耐用年数を超える。高度成長期からバブル期にかけて造られたインフラの老朽化対策は差し迫った課題であり、その安全性を高めるための投資は必要不可欠だ。一方で、新しいものを造れば維持費はかさむが、先々のことまで考えれば、単に「繕う」より効率がいいケースもあるだろう。ケースバイケースで最良の方策を見極め、より効果的な安全対策を進めていきたい。