コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/06/13

喜び半ばの世界遺産勧告

▼ユネスコの諮問機関のイコモスによる「沖ノ島」(福岡県)の世界遺産への登録勧告は、手放しではとても喜べない内容となった。八つの構成資産のうち、四つが除外されたことで、むじろ「残念」の感のほうが強い。推薦書案の意図を狙いどおりくみ取ってもらうことの難しさを改めて教えられた▼今回の勧告では沖ノ島(宗像大社沖津宮、周辺の岩礁を含む)は登録すべきとされたが、宗像大社辺津宮、中津宮、沖津宮遥拝所、新原・奴山古墳群は除外された。「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として登録を目指してきた地元や関係者の思いは複雑だ
▼とくに宗像大社が田心姫神(沖津宮)、湍津姫神(中津宮)、市杵島姫神(辺津宮)の総称であることを思えば、これら宗像三女神(宗像三神)を切り離しては考えられない。また、古墳群は史料を証明する物的証拠で、神社と一体的なものだ。勧告は信仰面の意義や価値を考慮しなかった結果と言えるだろう
▼九州本土から約60㎞の沖合にある沖ノ島は、大陸との航路の中間に位置し、4~9世紀には航海安全を祈る国家的祭祀が行われた。金銅製品や高級陶器の奈良三彩など豪華な奉献品が残され、「海の正倉院」と呼ばれる
▼世界遺産に登録されれば、観光スポットとしての注目度は格段に増す。ただ沖ノ島は島全体がご神体で、上陸は原則不可。女人禁制のタブーもある。環境が危険にさらされる恐れもあり、保護と観光をどう両立されるかが問題だ。登録によってこれまで以上の保護が図られることが望ましく、出土品の展示などを通じて宗像や沖ノ島への理解を深める機会ともしたい
▼これまでも条件付き登録勧告の先例としては「富士山」(2013年)で除外を求められた「三保の松原」などがある。このときは本番の委員会で登録が認められた。世界遺産の審査は登録件数の増加で年々厳しくなっているが、7月に開かれる世界遺産委員会での逆転一括登録を目指して、国を挙げて最後まで粘り強い説明努力を続けてほしい。

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