コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2017/04/25

時代映し出す縄文時代

▼国の特別史跡指定を目指す加曽利貝塚(千葉市若葉区)を久々に歩いた。同貝塚が特別史跡に指定されれば、縄文時代の特別史跡としては17年ぶり4例目、貝塚としては日本初の指定となる。今夏以降の指定が有力視され、今からその知らせが待ち遠しい
▼特別史跡は、国が文化財保護法で指定した史跡のうち、学術上の価値が特に高く、国宝と同等の価値を持つ。市は今年1月末に加曽利貝塚の国指定史跡指定に向けた意見を文化庁に提出しており、指定によりその歴史的価値が再認識されることは間違いない
▼貝塚といえば、以前は食べた貝を捨てたゴミ捨て場と捉えられることが多かったが、現在では縄文人の生活の知恵が垣間見られる集落跡としても注目される。近年、貝塚のみならず、縄文時代の見方が大きく変化しており、経済の行き詰まりや環境意識の高まりなどから、「1万年も変わらなかった遅れた文化」から「自然と調和し1万年も持続した文化」と見られるようになった
▼これまでの研究成果などから、縄文時代という時代区分そのものを見直すべきとの声もある。縄文時代が日本史の一時代を画す用語として定着したのは戦後1960年代で、まだ半世紀ほどだ。しかも、縄文時代の見方は時々の世相を反映して変化してきた
▼当初は農耕以前の貧しい時代とされたが、高度経済成長に伴って各地で発掘が進み、70~80年代には豊かな狩猟採集社会というイメージが定着。やがてバブルが崩壊し、格差社会を巡る議論が盛んになると、縄文時代にも階層社会があったとする説が有力になった
▼一口に縄文時代といっても1万年以上に及ぶ。日本列島の中でも時期や地域で大きく異なる文化を持つことが明らかになってきた。縄文文化とは複数の文化の総体で、ひとくくりにはできない多様性を持つものと考えるべきだろう。今後は、先入観を排し、一度解体して捉えなおす必要もありそうだ。加曽利貝塚の特別史跡化は、縄文時代をそうした柔軟な視点で見つめなおす契機にもしたい。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ