コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/02/07

高齢者の定義に関する提言

▼日本老年学会が先に発表した、高齢者の定義に関する提言には、賛同の声や疑義を呈する意見など様々な反響があるようだ。提言は、高齢者の定義を「65歳以上」から「75歳以上」に引き上げ、それより若い人たちには就労やボランティアなどの社会参加を促すべきとする内容。平均寿命が上がり、元気な高齢者が増えている現状を考えれば、高齢者定義の引き上げはある意味、当然の流れと言えるかもしれない
▼提言では、10~20年前と比較して、従来高齢者とされてきた65歳以上の人でも、健康で社会活動が可能な人が大多数を占め、様々な意識調査の結果でも、65歳以上を高齢者とすることに否定的な意見が多いとしている。内閣府の調査でも、自分が高齢者と感じる人は65~69歳では24・4%にとどまっている。実際の健康状態はもとより、高齢者自身の意識も若返っているのは間違いない
▼現在の日本の平均寿命は男性80・79歳、女性87・05歳。65歳以上を高齢者とすると、平均寿命まで男性が約15年、女性が約22年ある計算になるが、これはあくまで平均寿命との比較にすぎない。健康上問題のない状態で日常生活が送れる「健康寿命」は、平均寿命の「マイナス10歳」程度とされており、これに照らすと男性の場合は75歳を大幅に下回る。現実には75歳前に不健康になってしまう人が多いことも推測できる
▼こうした様々な側面から考えると、高齢者定義の引き上げが波紋を呼ぶのも当然といえるだろう。第一に危惧されるのは、年金支給年齢が引き上げられるのではないかという点だ。老年学会は「今回の発表はあくまで医学的に若返っていることを伝えたもの」としているが、「高齢者のカテゴリーが縮小することは社会保障の対象が減るということ」と、社会保障の改悪に警鐘を鳴らす専門家は多い
▼高齢者が元気になることは喜ばしいが、定年が繰り上がれば、若年層の雇用を圧迫する恐れもある。高齢者定義の引き上げがどのような影響を及ぼすのか、引き続き注視していく必要がある。

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