コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/01/17

「平成の大遷宮」進む出雲大社

▼遷宮といえば、20年ごとに行われる伊勢神宮の式年遷宮が有名だが、伊勢神宮と並んで神社の代表的存在である出雲大社でも60年ぶりとなる「平成の大遷宮」が行われ、話題を集めた。1744年に造営された本殿(国宝)の遷宮はこれまで3度行われ、前回は1953年だった
▼今回の遷宮では、祭神の大国主大神を本殿から仮殿に遷座する「仮殿遷座祭」が2008年4月に執り行われ、09年からは本殿だけでなく摂社・末社でも修造工事が進められてきた。13年5月には、大国主大神が修造を終えた本殿に還る「本殿遷座」が行われ、昨年3月に境内境外すべての社殿の修造遷宮を終えた。現在は第2期事業として国造鎮守社や宝物殿などを改修中だ
▼遷宮とは、ご神体やご神座を本来あった場所から移し、社殿を修造し、再びご神体を戻すものだが、その意味は①木造建築建物の維持②社殿建築など様々な技術の継承③神社の清浄さの維持――など諸説ある。とくに出雲大社の遷宮は、神事的な根拠より社殿の老朽化による意味合いが強い
▼本殿の修造では、約70万枚に及ぶ膨大な檜皮(ひわだ)の調達や、施工技術を持つ職人の確保などに様々な困難が伴った。震災被害に遭った東北地方の木材なども使用され、銅板には130年ぶりに「ちゃん塗り」と呼ばれる特殊な塗装が施された
▼筆者は第1期事業終了後の昨秋、大社を参拝する機会があり、権宮司の千家和比古氏から遷宮の変遷について説明を聞いた。それによると、礎石を置いて柱を立てる方式になったのは1609年からで、遷宮はそれ以降60年スパンになったが、それ以前は柱穴に直接木柱を埋め込む方式だったため、概ね30年ごとの遷宮だった。さらに遡って古代には、床下が持ち上がる巨大な神殿形式で、自然条件に応じて不定期に建て替えられていたという
▼今回の遷宮について千家氏は「境内で何かを感じ取ってお帰りいただきたい。そのための空間づくり」とその意義を強調した。進行中の第2期事業は2019年3月まで続けられる。

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