2016/12/13
「隠岐の島」過疎への挑戦
▼この秋、島根県・隠岐島を訪問する機会があり、直面する地方の少子高齢化や過疎化の問題を考えさせられた。人口減少が進む地方の、しかも離島ともなれば、これらの問題を避けて通るのは難しいが、一方で、様々な工夫やPRによる町おこしの風も肌で感じた▼隠岐は島根半島の北方約50㎞にある諸島で、島前と島後に分かれる。180余の島からなり、全体の面積は350㎢、人口は約2万1000人。古くから遠流の島として知られ、小野篁や後鳥羽上皇、後醍醐天皇らが流された。また、豊かな自然から2015年にはユネスコ世界ジオパークに認定された
▼今回筆者が訪れたのは、島後・隠岐の島と島前・西ノ島。諸島では面積、人口とも最大と2番目の島だ。荒々しい日本海を臨む岸壁などの絶景はもちろんのこと、歴史的な文化遺産も多いが、オフシーズン入りのタイミングだったこともあり、観光客はまばら。島民は大半が自家用車で移動するため、島内には人影も少ない
▼諸島内には高校は3校のみで、大学や短大、専門学校がないため、進学希望者は本土に行くしかない。かつては大学卒業後必ず島に帰るよう親が〝念書〟をとっていたが、今では島に戻っても仕事がなく、結婚相手にも乏しいことから、島を出た者が島に戻ることはますます少なくなっている現実がある
▼その一方で、島にあこがれて都会から移住してくるiターン現象も起きている。島前・中ノ島(海士町)では県立隠岐道前高校の「島留学」という制度が人気を博し、島外からの〝留学生〟で異例の学級増を果たした。生徒それぞれに島親がつくなど細やかな配慮も人気の理由だという
▼相撲の盛んな隠岐には古典相撲と呼ばれる行事があり、島内の大きな事業の祝い事の際に催される。体格ではなく性格で選ばれ、同じ人と2回勝負し、どんなに強くても必ず1勝1敗で終わらなくてはならない決まりだ。人間関係にしこりを残さないこうした配慮も、人情豊かな島、隠岐ならではの心遣いのように感じられた。