コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/04/26

新たな課題突き付けた熊本地震

▼天地を恨みたくなるばかりの熊本地震だった。いや、〝だった〟と過去形ではとてもくくれない。16日の本震から10日が経った今も、多くの被災者が過酷な避難生活を強いられている。先行き不安はいかんともしがたいが、不幸な出来事を不幸なだけで終わらせてはならない
▼東日本大震災と同様、今回の地震にも「想定外」の文字が付きまとう。地元の方々もまさかこれほど大きな地震が起こるとは思ってもみなかっただろう。実際、近代の震災史をみても、19世紀半ば以降、九州地方で地震による目立った被害は起きていない
▼ただ今になってみれば、九州には阿蘇山などの活火山が多く、おびただしい数の活断層が走っている。活断層はそもそも過去の地震の傷跡だ。火山の多さから「火(肥)の国」と呼ばれる熊本について、我々は地震と重ね合わせて考えてみることを忘れてはいなかっただろうか
▼驚いたのは、当初本震と思われた14日の地震(M6.5、震度7)が実は「前震」であり、16日未明の地震(M7.3、震度7)が「本震」だったことだ。これら一連の地震が、阿蘇地方や大分県も含めた広範な地域で連鎖的、同時多発的に地震を引き起こす異例の事態となった。とりわけ16日未明の本震は阪神大震災に匹敵する規模で、エネルギーは前震の約16倍の大きさだったという
▼筆者もそうだが、地震と言えば本震ありきで、のちに余震が続くとしか考えていなかった人は多いのではないか。どれが本震かは地震が収束してからでなくては確定できないことを、今回の地震で教えられた。東日本大震災とはまた違う内陸型の活断層地震の怖さを見せつけられた
▼今は一日も早い地震の収束を願い、広域的な被災者支援や復旧・復興への筋道を立てることが喫緊の課題だ。ある被災者の方が「普通であることの幸せを痛感した」としみじみ語るのをテレビで見た。その言葉をかみしめつつ、今回の地震から得られる教訓を今後にどう役立てていくかが私たちに課せられた使命である。

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