2011/11/21
企画展「ふさのくに 商いはんじょう記」
▼千葉県文書館で開催中の企画展「ふさのくに 商いはんじょう記」では、商業が都市とともに発展してきた様子が、各種資料によって紹介されている
▼江戸時代には農村でも領主などの要求に応えるために商業活動が行われ、いわゆる“在方商人”も少なくなかった。度重なる幕府の禁止令にもかかわらず、村内での商いを通じて財力を身につけていったその姿は、農民の力強くしたたかな面も感じさせる
▼展示史料には、妻が病気になった農民が商いを申し出る旨の願書もあり、病気が治癒したら商いをやめる約束が付されている。農民が生活維持のために普通に商いをする一方で、領主側の触れを順守する態度も見せなければならない苦しい立場がうかがえる
▼商業は港町や宿場町、旧城下町など人口の多い都市を中心に発展し、交通網の整備と都市人口の変化が商圏に大きな変化を与えた。とくに興味深かったのは県内人口の上位市町村の推移。明治7年(1874)には1位が銚子で、1万7688人に及ぶ。以下、船橋9494人、佐倉6681人と続き、千葉は9位の3110人にとどまる。千葉がトップになるのは明治22年(1889年)以降だ
▼明治初期に人口1位だった銚子は、利根川河口の交通の要衝で港町として栄えた。関東では東京、横浜、水戸に次ぐ大都市に数えられていたという
▼様々な角度から房総の「商い」に焦点を当てた今回の企画展。東日本大震災で物不足を経験し、改めて商品の流通・販売の必要性を実感したこの時期だけに、いっそう意義深い展観に感じられた。