コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2011/11/14

TPP交渉参加に期待と不安

▼交渉参加の是非をめぐり議論が白熱していた環太平洋経済連携協定(TPP)。野田首相がついにTPP交渉参加の方針を決めた。しかし、そもそもTPPとは何なのか。推進派と慎重派の対立の背景には、TPPの具体的な内容自体が不透明という事情もあり、明らかな説明不足、情報不足の状態での議論には虚しさすら覚える
▼専門家によれば、他の参加国には必ず自国に有利な戦略的な狙いがあるが、日本の場合は「交渉参加が自分たちにとって損か得か」のレベルでしかなく、TPPに参加するなら「何を達成したいのか」を明確にする視点が欠けているという。オバマ大統領から突然言われて急浮上してきた実体不明の政治課題にすぎないのなら、この騒動はあまりにも情けない
▼無論、TPPは建設業界にも大きく影響する。日本はすでに世界貿易機関(WTO)の政府調達協定に参加しており、一定金額以上の公共事業では海外企業が参入できるが、TPPの内容次第ではその金額が一段と低くなる可能性がある。公共事業の一部で海外企業が入札に参加できる基準額が現行制度の30分の1程度にまで引き下げられるとの見方まである
▼前田国交相は先日の会見で、賛成、反対ではなく「ニュートラル」な立場と発言しつつ、「海外にTPPなどで出ていく機会が増える」とのメリットも強調。日本のインフラ輸出などに期待感を示した
▼一方で、国内の公共調達を外国勢に開放することになり、価格競争の激化により、地方の中小建設業者が仕事を奪われる懸念もぬぐえない。外国企業のアクセス権を認める「政府調達」の対象範囲や基準金額をめぐる調整には慎重を期する必要がある。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ