2011/10/03
工夫と熟慮要する復興増税
▼議論が本格化している復興増税。政府税調が、所得税、法人税を中心に総額11.2兆円の臨時増税案をまとめたことから、野田首相はこの規模を前提に増税法案をまとめる考えを示している
▼「一定の増税は必要」との認識に立てば、あとは東日本大震災の復興財源をどう手当てするか、税目や実施期間はどうするかなどが焦点となる。消費税を復興財源から外したことは、おおむね妥当な判断と評価したい。この経済情勢で消費税を増税すれば、とりわけ中小零細企業にはあまりに負担が重い。消費税はやはり、膨張が避けられない社会保障費に充てるべきだろう
▼多くの税目を組み合わせ、負担の集中を避けることで、できるかぎり納税者の荷を軽くするよう努めてほしい。実施期間も短時間を原則とし、復興需要による景気の押し上げ効果が大きいうちに増税することが望ましい。所得税の増税期間も「10年」あるいは「10年超」などでは長すぎる。臨時増税ともいえなくなり、それこそ将来世代に大きなツケを回すことになる
▼一方で、増税が震災後の日本経済に与える影響についても慎重に見極めていく必要がある。そのためには、公務員人件費の見直しや政府保有株売却の徹底などにより、増税額を可能なかぎり圧縮すべきだ。はたして11.2億円が必要なのかの再検証も求めたい
▼話を振り出しに戻せば、こうした緊急時には、赤字国債や建設国債の発行で対応するほうが理想ではある。しかし、それには震災前の時点からすでに国の借金がかさみすぎていた。後の祭りとはいえ、いまさらながら政治の無策が悔やまれる。