2011/07/12
多重防御にもハードは重要
▼これまでのハード整備による「一線防御」から、ソフトを含めた「多重防御」へ―。国土交通省が先にまとめた、東日本大震災の復旧・復興へ向けた対応方針で、こうした方向転換が明確に打ち出された
▼海岸にコンクリート構造物を築き、港や街を守る従来の津波対策から脱却し、ハード対策に加えて、土地利用規制や住宅地移転、建物強化、防災教育などを幾重にも組み合わせることで、被害を最小に食い止めようという発想だ。いわば、「多重防御」が「減災」という考え方と一対で示されたかたちだ
▼とはいえ、具体的な施策例をみれば、海外堤防などの復旧と併行して、避難タワーの整備や砂防事業にともなう避難路の設置などが含まれ、大半がハード抜きには語れない。新たな方向の中でも、建設業の役割が変わらず大きいことは火を見るよりも明らかだ
▼そもそも、今回の震災でも防波堤や防潮堤が無力だったわけではない。津波がやすやすと越えたように見えても、もし堤防がなかったらどうだったかを検証する必要がある。東北・太平洋岸で実に190キロ分が全半壊したといえ、津波の高さや速度をどれだけ抑えたかを調査し、その上で、より壊れにくく、粘り強い構造に改良していくべきだ
▼また今回の対応方針には、災害に強いしなやかな国土形成という目標に加えて、地域建設業の再生についても盛り込まれた。建設業が地域社会の維持に不可欠な存在であることが、この震災を通して示されたといっても過言ではない。3・11直後から復旧にいち早く動いた建設業の力が確実に認知されてきているように思える。