コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/06/19

一体改革に程遠い決着

▼社会保障と税の一体改革をめぐる修正協議で民主、自民、公明の3党が合意した。しかし、3党間で隔たりのある社会保障制度改革については棚上げにされ、「一体改革」には程遠い決着となった。これでは「増税ありき」の歩み寄りとしか国民の目には映らない
▼修正協議では歳出面の大胆な削減には踏み込んでおらず、このままでは基礎的財政収支の黒字化は困難との見方が強い。社会保障の将来像を描けず、財政健全化への道筋も開けないのでは、明るい展望はまったく抱けない
▼中小企業にも増税は大打撃だ。97年に消費税を5%に引き上げたときも、多くの企業は増税分を製品価格に上乗せ(転嫁)できなかった。今回も値引きを求められて増税分を払ってもらえず、自腹で増税分を納めなければならない下請け企業などが出てくるとみられる
▼そもそも、2015年度に消費税を10%に引き上げたとしても、その先の赤字縮小のめどはまったく立っていない。基礎的財政収支の赤字幅は12年度で25兆円程度に上るが、消費増税5%の税収は年間10兆円程度にしかならず、財政再建もままならない
▼社会保障給付の増加を抑えない限り、財政悪化が止まらないことは火を見るより明らかだ。にもかかわらず、そうした給付削減や支給開始年齢の引き上げなどに踏み込まなかった点は大きな問題といえる
▼このままでは現役世代の将来不安は解消されず、消費抑制につながることも懸念される。増税が暮らしを直撃するだけの結末では、何のための改革なのか首をかしげざるを得ない。

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