コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2011/04/25

「安全に想定外なし」肝に

▼ 東日本大震災には「想定外」がつきまとう。地震しかり、津波しかり、原発事故しかり。都市部の液状化や食品の風評被害もこれに加わる。しかし、「想定外」のひと言で片づけてしまっては重大なものを見落としかねない。災害史に残る過去の事例をいま一度徹底検証することが今後の災害対策にもつながる。過去から学ばなければ、復興後のより良い未来図も描けまい
▼ 東北地方はこれまでも幾度となく地震による津波の被害を受けてきた。明治三陸地震津波(1896年)では約2万2千人、昭和三陸地震津波(1933年)では約3千人が犠牲になった。これらを教訓とし、最大で10㍍の防潮堤をつくり、最大級の災害に備えてきた。東北はいわば防災の先進地域でもあった
▼ にもかかわらず、今回の津波はその大堤防をやすやすと越え、過去に例がない内陸部にまで浸水した。専門家らの衝撃も大きい。最悪の事態に備える防災の基本をもう少し考えておくべきではなかったか。結果的に想定の甘さが悔やまれる
▼ 専門家の指摘によれば、研究レベルでは知られる869年の「貞観地震の大津波」と比べても、津波の高さや到達距離から、今回の津波は同等以上と報告されている。千年に1回どころか2千年に1回の災害といわれるゆえんである
▼ 確かにハード面の整備には限界があるし、情報伝達や避難誘導などソフト面の充実がより重要になるのは言うまでもない。しかし、ソフトはハードの上に立つ。防潮堤は今後もつくらなければならないし、住宅や学校、病院などの再建も急務である。安全というものに対して想定外はないことを肝に銘じつつ、強固な防災都市づくりを全力で進めたい。

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