コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2011/04/19

賢治に教えられた言葉の力

▼ メディアから流れる被災地の惨禍を見るにつけ、言葉を失った。まして被災者の方々にかけるどんな言葉があっただろう。言葉は脆弱で無力とさえ思えた
▼ そんななか、震災直後から、国民的作家・宮沢賢治の代表作「雨ニモマケズ」が、国内に、そして海外にまで広がっていった。困難な今こそ強い気持ちを持ってほしい。賢治の詩は、震災に打ちひしがれる人たちへのメッセージとなっていた
▼ 賢治は1896年8月27日、現在の岩手県花巻市に生まれた。東北沿岸部を襲った大津波で約2万2千人の死者・行方不明者を出した明治三陸地震の2か月後である。さらに亡くなる半年前の1933年3月3日には、約3千人の犠牲者を出した昭和三陸地震にも遭っている。地震の4日後、賢治は詩人の大木実にあてたはがきに「被害は津波によるもの最多く海岸は実に悲惨です」と記している。賢治が誕生と死去の年に大きな災害に遭っていることは、天候や気温、災害を憂慮しつづけたその生涯とも重なり合う
▼ 「雨ニモマケズ」は、賢治が亡くなる2年前の1931年11月3日、病床で手帳に鉛筆でしたためられた。以後、戦時中から、苦難を耐え忍ぶ象徴として広く読まれ、愛されてきた
▼ この詩には、悲しみや苦しみだけでなく、困難に立ち向かう日本人のねばり強さが表現されている。重い語感の中に、未来に向けた希望さえ感じ取れる。今回の震災でも、自らに重ね合わせて勇気づけられた人は多かろう。改めて、言葉の力というものを教えられる出来事だった。

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