コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/03/12

震災1年に思う

▼この週末は「震災1年」の文字があちこちに躍った。まだ1年ではなく、もう1年の感が強い。被災地ではがれき処理や除染、雇用対策など課題が山積し、いまも34万人以上が避難生活を強いられている
▼1年たって少しずつ震災のことを忘れられるようになった、との被災者の言葉もあった。辛い記憶にようやく距離を置けるようになったのなら<CODE NUM=0341>時の効用<CODE NUM=0343>ともいえるだろう。それが明るい希望につながれば、多くの犠牲も無駄にはなるまい
▼一方で震災の事実を記録し、語り継いでいく責任も、私たちにはある。原発事故は別にしても、災害史を振り返れば、同じような地震や津波の被害が繰り返されてきた。過去の教訓をきちんと学んでいれば、との悔いが残る。今回の震災の教訓は、ぜひ今後の防災教育に役立てたい
▼震災1年に寄せる思いがさまざま語られるなか、筆者の印象に残ったのは、「被災地を前に一度は言葉を失ったが、これからはその中から拾える言葉を語っていく」というものだ。「人間は忘却の生き物」などともいわれるが、都合の良い忘却だけは慎みたい。震災に関連する政府の組織で議事録が作成されていなかったことが問題になったが、これなどは忘却以前の問題で、ただあきれるほかはない
▼日本国籍を取得した日本文学者のドナルド・キーン氏はこう語っている。震災直後は東京でも節電などで「力を合わせて東北の人を助けている」と感じたが、「いまは明るく、必要のない(電光)看板がたくさんある」。「絆」や「共助」の言葉が一時だけのものに終わらぬよう肝に銘じたい。

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