コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/01/06

地域文化打ち出す星野リゾート

▼星野リゾート代表の星野佳路氏は、観光業界の風雲児といえよう。氏が率いる星野リゾートのホテル・旅館の再生事業は、いまや飛ぶ鳥を落とす勢い。氏の手にかかると、再生困難と言われた物件が次々とよみがえり、2005年に4拠点だった運営拠点は30ほどにまで拡大した。この急成長はどこまで続くのか
▼秘訣の一つは、コンセプト決めに時間をかけることだという。施設ごとに異なるコンセプトを顧客に提供。宿泊を通して、地域の文化を紹介し、地域の魅力を発見してもらう。その方策の一つが、各施設に用意されている「ご当地楽」と銘打たれた催しだ。日光なら「日光下駄」、箱根なら「寄木細工」、熱海なら「投扇興遊び」といった具合だ
▼日光下駄は、草履の下に木の下駄を合わせたもので、400年の歴史がある。江戸時代には、格式を重んじた社寺への境内参入には草履を使用するのが原則だったが、日光東照宮など日光の社寺は石や雪、坂が多く、草履では歩行が不便なため、日光下駄の始まりとされる御免下駄が考案された。施設では、その由来を紹介する日光下駄談義や日光下駄での散策などが楽しめる
▼箱根では、寄木細工の誕生や作業工程の秘密を紹介する紙芝居や、寄木細づくり体験などを実施。「天下の険」と言われるほど険しい山々の多種多様な樹種を利用した木工の魅力に触れることができる
▼熱海では、明治時代から要人をもてなしてきた芸妓文化を紹介。熱海は今も100以上の置屋に200人以上の芸妓を数え、日本屈指の芸者文化が残る。芸妓の手ほどきにより、投扇興などのお座敷遊びが体験できる
▼いずれも近い将来失われかねないご当地文化に焦点を当て、そうしたものを肌で感じてもらうことで旅の本質に迫ろうとする。氏いわく「ニッチを極める」。現代風に親しみやすくアレンジされた面もあるが、そこには観光リゾートとしての高い志が感じられる。氏の目指す観光ビジネスの形が、日本のスタンダードになる日もそう遠くないかもしれない。

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