コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/10/06

洋食の居場所

▼先日、洋食屋に入って、メニューを手にふと考えた。洋食とはそもそも和食の一種なのか、西洋料理の括りなのかと。辞書的には広義で「西洋料理から西洋風の料理全般」、狭義では「日本独自に発展した西洋風の料理を指す日本料理の一種」とある。曖昧模糊とはしているが、立派に確立された一つのカテゴリーである
▼和食はユネスコの無形文化遺産にも登録され、一般的には食材を生かし、日本独自の料理法を用いた料理群とされる。こうした定義に照らすと、洋食は和食とはずいぶんかけ離れたものに思える。感覚的にも何を食べるか考えるとき、大抵の人は和食やフレンチ、イタリアン、中華などと同様に、一つのジャンルとして洋食に食指を伸ばすのではないか
▼日本料理という言葉が初めて使われたのは明治時代で、和食も日本料理と同じく、明治維新以降に普及した西洋料理や洋食に対抗する概念として生まれた。それでいて洋食は、和風化された西洋料理や和洋折衷料理として発達を遂げた。考えるほどに、複雑な相関関係に気づかされる
▼俗に「3大洋食」と言われるのが、トンカツ、コロッケ、カレーライスだ。その語源は、カットレット(英語)、クロケット(仏語)、カリー・アンド・ライス(英語)。ただし料理法は、元の料理とは大きく異なる。トンカツなどは、ご飯と味噌汁、漬け物とのセットが定番となり、完全に日本料理と化すに至っている。華麗な変身どころでない変容ぶりだ
▼洋食に共通するのは「白いご飯に合う」「洋風を取り入れたご飯類」などだろう。「パンと合うのが西洋料理、米飯と合うのが洋食」との説もあり、いささか単純明快にすぎる区分けだが言い得て妙だ
▼自分のものとする才知にたけている日本人。その意味ではいかにも日本的な変遷を遂げてきた、わが洋食。和食と西洋料理のはざまで居場所に困らぬよう、これからも応援し続けたい。

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