コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2014/07/28

消えた歩道橋に思う

▼ふだん気にかけていないものでも、知らぬ間になくなっていると、どこか腑に落ちない気分になったりする。通勤などで毎日のように車で下をくぐっていた千葉県庁わきの歩道橋が、先日の3連休中に撤去されていた。聞けば、20日未明に老朽化のため撤去されたという
▼県庁と周辺施設などを約40年間つないできた「市場歩道橋」。その名の通り、千葉市中央区の市場町と長洲1丁目をまたいで架かっていた。かつては県庁の複数の庁舎を結ぶ役割を果たし、多くの職員が行き来していた。当時を知る人からは懐かしむ声もあるそうだが、筆者もその一人と言っていい
▼かつては県庁や県警などと、企業庁や水道局が入居する別の庁舎とを結んでいた。歩道橋下の道路には横断歩道があるものの、信号待ちの時間を惜しむ職員たちと同様、筆者も取材時にはこの歩道橋を駆け上ったり駆け下りたりすることがしばしばだった
▼1971年の設置というから、40年の長きにわたり歩行者の利便に役立ってきた。3年前の定期点検で階段部分の腐食が見つかり、近くの千葉都市モノレール「県庁前駅」にも同様の設備があることから、昨年11月に市が撤去を決めたという。そういえば、確かにだいぶ前から錆びついて老朽化していた記憶がある
▼歩道橋は全国で約1万基あり、このうちの約半数が設置から40年を超えている。これまでに撤去された歩道橋は少なくとも429基で、うち4割にあたる181基が過去5年以内に撤去されている。老朽化と高齢社会を背景に、歩道橋は今後、減少へ向かう運命にあるようだ。信号機や横断歩道のほうが安全面で信頼性が高く、通学時間に保護者が監視できる利点もある、と指摘する識者もいる
▼突如消えてしまった県庁わきの歩道橋。不思議なもので、最初はどこか腑に落ちなかったが、二日、三日と経つと、そこに存在したことさえすっかり忘れている自分に気づく。「人間は忘却の動物」と言ったのは誰だったか。御多分に漏れず、筆者もその一人だったわけだ。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ