コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/07/14

「傘がない」では済まされない

▼先日、出勤時の車の中で、ラジオから井上陽水の「傘がない」が流れてきた。久しぶりに聴いてみると、懐かしさとともに、この曲は「今そこにある危機」をうたっているのだと思ったりもした。つまりは「都会では自殺する若者が増えているが、さしあたりの問題は雨なのに傘がないことだ」と
▼危機と言っては大げさに聞こえるが、現実に目を向ければ、あながちたかが雨とも片づけられない。昨今の異常気象では、ただの雨が局地的な豪雨や雷雨、はたまた突風や雹(ひょう)にもなりかねないからだ。長かった梅雨が終わりに向かっているとはいえ、不安定な天候は今後も続くと予想される。先週の台風8号も、西日本を中心に大きな爪痕を残した。歌にあるような「冷たい雨が今日は心に浸みる」などとセンチメンタルな思いにばかりは浸っていられない
▼話を傘に戻せば、ウェザーニューズ社が6月中旬に実施した調査では、よく使う傘の種類は「長傘」62%、「折りたたみ傘」21%、「ビニール傘」16%で、千葉県も同様の傾向だという。折りたたみ傘と答えた比率を都道府県別にみると、1位が東京の30%、次いで神奈川28%、奈良26%で、千葉県は4位の25%だった
▼1年間に何本の傘を買うかでは、都道府県別の結果でやはり東京が最多の1・17本。千葉も1・01本と全国平均の0・96本を上回っている。ただし東日本大震災前の調査では全国平均が2・32本だったというから、震災によってモノを大切にする機運が一気に高まったとも考えられる。ちなみに、日本で最も購入本数が少ないのは山形県で0・72本。同県は「天気予報を確認する回数」が最も多い県というから、これは「備えあれば憂いなし」の実践例と言えるかもしれない
▼蛇足めくが、「傘がない」の歌では「都会では自殺する若者が増えている」の次に「今朝来た新聞の片隅に書いていた」と続く。新聞報道に携わる身には、何とも泣かせるセリフだ。片隅の記事にも相応の価値があると心して、日々の仕事に当たりたい。

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