コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/06/09

W杯ブラジル大会

▼W杯ブラジル大会が近づいてきた。コートジボワール代表との初戦まで1週間を切った。日本代表がどんな姿を見せてくれるのか、期待に胸が膨らむ。日本のW杯出場も今回で5回目。参加するだけの時代は終わりにして、ぜひ強豪国を脅かし、打ち破ってもらいたい
▼いや増す高揚感に水を差すつもりはないが、これまでのW杯で筆者の脳裏に強く刻まれているのは、初出場のフランス大会でも、ベスト16の日韓大会や南アフリカ大会でもない。3戦全敗で1次リーグを敗退した2006年ドイツ大会、あえて言えば3戦目のブラジル戦で燃え尽きたようにピッチに倒れ込んだ中田英寿の姿に他ならない。あのときの光景はいまでも忘れられない
▼W杯敗退後の報道で、当時のチームにコミュニケーションや闘争心が欠如していたことが取りざたされた。決定力が課題なのに、練習でシュートを外して笑っているFW。勝つしかないのに、失敗を恐れて冒険的なプレーに出る勇気のない選手。試合に出られないからと、冷めていた控え陣。試合前後のバスでは携帯ゲームに興じる選手までいたと言う
▼中田はあえて憎まれ役に徹し、他の選手たちと距離を置いた。しかし、彼の真意は最後まで伝わることがなかった。ブラジル戦終了後のピッチ上で彼は、苛立ちや失望の果ての感情に身をゆだねていたと推察される。センターサークルの中で仰向けになり、カナリア色のブラジルのシャツを顔にかぶったまま、長いことそんな自分を隠そうともしなかった。ある外国人サッカージャーナリストは彼の行動を「自分のサッカーを、自分の国を、深く愛していることを、最後の瞬間に誰にもわかる形で示した」と書いていた
▼あれから8年が経った。日本代表は様々な意味でどれほど成長しているだろう。海外の有力リーグで活躍する選手も増え、状況も当時とは雲泥の差だ。現在の日本代表が、W杯という厳しい舞台で戦える、真のプロ集団であることを信じつつ、その戦いぶりをこの目でしかと確かめたい。

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