2012/01/18
本県ゆかりの日本画家「関主税」の全貌
▼1月15日まで千葉県立美術館で開かれていた企画展「関主税(ちから)展」を観て、あくなき探求を続けた作家の画業の全貌とともに、しばしば題材として扱われた千葉県の自然の美しさに感じ入った。入念なスケッチの繰り返しの果てに確立された、朦朧として幻想的な情景は、画家が生涯をかけてつかみ取ろうとした“幸せ”の形でもあった
▼関主税は長生郡に生まれ、船橋市に没した、本県ゆかりの日本画家。中村岳陵に師事し、日展を中心に作品を発表。日展では内閣総理大臣賞を受賞し、晩年には理事長も務めた。1986年には千葉県で初の日本芸術院賞を受賞している
▼1949年に日展で初入選を果たした「道廟の朝」は、茂原市の道廟山を題材にした作品で、1999年の絶作「園」にいたる日展出品作全46点の記念すべき第1作となった。全体に緑味を帯びた落ち着いた色彩で、関が好んだ水面に映る木々が描かれている。処女作には作家のすべてが内包されるとはよく言われるが、関の場合も例外ではなかった
▼一方の絶作「園」は、千葉市の県立青葉の森公園が題材。何十羽もの鴨が浮かぶ湖は舟田池だろうか。冬の公園の澄み切った美しさが張り詰めた筆致で描かれ、紙の地色を生かして白描画のような様相を呈している
▼この絶作には、自らの死を悟ったかのようなコメントが残されている。「黄金色の柔らかな光の中に、水鳥の声だけが聞こえていた。静かに平明な感動が湧いた。ただひとり次の世を想った」。関が最後にたどり着いた境地は、紙と墨の色が響き合う、色なき色の世界だった。